(無題)
帰り道うっすら雪が降り積もる滋賀の平野の小高い丘に
平成の二十五年が始まった一日ごとに誓い立てよう
徹夜して我が家の猫は眠たそう二十五年の元日の朝
透明なガラスの花瓶用意して白と黄色の水仙挿そう
つやのある青葉の中に三つ五つ赤の椿を君と見ている
雪景色比良の山脈谷深し望み見る程厳しさ思う
冬の日の農道歩く黒い犬老人引いてまっすぐ進む
冬の夜新幹線の座席には幼い声のアイアイの歌
風寒い名古屋の駅のホームには二列に並ぶ終電の客
花びらの数いっぱいの金盞花畑の隅に光り咲いてる
たんぽぽの黄色の花を見に行こうコートを脱いで手袋とって
三月の夕陽を浴びた伊吹山頂上付近銀色の雪
ぷっくりと杏の蕾膨らんで今か今かと時を待ってる
(無題)
鎌倉の大本山の光明寺大殿入りて詠歌独唱
三月の滋賀の平野は麦の色若い緑が畑いっぱい
春彼岸迎えるようだ伊吹山木の芽の色がざわついている
もうすでに早咲き桜咲いているオカメ桜と三度答える
たくさんの白木蓮の花びらがざわざわざわと話し合ってる
春休み桜吹雪の校庭に少年野球のホーイソプラノ
東京は花びら散って葉の桜緑の色も生き生きしてる
増上寺三十二回大会に声張り上げて詠歌唱える
伊吹山四月半ばは新芽色薄紅も春に合ってる
善導寺八百年の大遠忌稚児も導師も念仏の中
大本山善導寺にて唱えする
三上人の遠忌和讃を
知恩院御忌詠唱の大会に猊下垂示は感動のこと
光ってる滋賀の四月の緑色麦穂は伸びて木々の芽は吹く
公園の赤紫の躑躅見て君の言葉が明るくなった
緑葉と八重山吹の色が好きあの日の話し覚えてますか
薄紅も純白色も花水木君と歩いた図書館の道
たくさんの藤の花房棚の中甘い香りに君も酔ってる
稚児歩く晋山式の太蓮寺保育園児も今日は別人
静岡の駅の隣のホテルにて講演テーマひと山頭火
むくむくと木々の新芽が涌いてえ。高速道路右も左も
今見たよ君が言ってたあの街の夢という名の真っ赤な薔薇を
雨となりははははははと笑い出す女子高生の自転車二人
走ってる滋賀の平野の田の中を夏制服の中学生が
家々の瓦の屋根が光ってる梅雨の合間の滋賀の田園
見に行こう御池通りのバス停のそばに咲いてる花の梔子
たくさんの枇杷の実風に揺れている梅雨の晴れ間の農家前庭
三重県の津市の総合センターに集う人々詠歌喜ぶ
六月の雨の歩道を並び行く君の手のひら上を向いてる
米原の駅の回りは六月の雨に濡れてる田の緑色
七月の三河の平野色緑風に靡いてスイングしてる
つんつんと稲の青葉が立っている琵琶湖のほとり滋賀の田園
七月の伊吹の山は深緑堂々として自信満ちてる
七夕の空を見上げて祈ろうよ叶うといいね君のお願い
雨上がり夏公園の百日紅陽射しを受けて光っていたね
その姿夏の暑さに負けてない日日草が今日も咲いてる
夏休みプール登校蝉の声ハンドマイクの声と張り合う
夏の夜の小学校の盆踊り炭坑節が今も流れる
その名前宇宙公園蝉時雨すべてのものは輪廻転生
灼熱の道路の脇に堂々と赤と黄色のカンナ立ってる
炎天の空に向かって花開く負けるもんかと赤のペチュニア
八月のスカイブルーの中を行く積乱雲の白の輝き
初めての出雲平野をバスで行く瓦は光り稲穂色づく
国譲り出雲大社の本殿の回り歩いて霊気を浴びる
宍道湖の北側走る電車乗る
夏の終わりの参拝旅行
夏陽射し宍道湖南ハイウエイ木々の間に光る水面
少しずつ実りの色になってきた滋賀の平野の田園のさま
伊吹山夏の終わりの夕姿緑の色が強くなってた
岡山の駅より乗車伯備線家の造りを見るも楽しい
石垣のお寺備中高梁の駅から見えた一瞬の景
初めての小泉八雲記念館二十五年の夏の思い出
松江にて小泉八雲住んでいた家の庭には睡蓮の池
築以来四百年の松江城天守に上り湖を見る
印度学仏教学の学会の発表を聞く松江の町で
谷川を右に左に見て進む中国山地電車の旅行
高野山御廟参道中ほどに祖師の輪塔しばし念仏
秋の日にいっぱい咲いた彼岸花紅赤色がとても綺麗だ
コスモスの花咲いている草原を君と一緒に歩いてみたい
十五夜に薄供えて月を見る離れていても心は近い
十月の伊吹の山に雲掛かる暗緑色に緊張を見る
(無題)
詠唱の荘厳という垂示あり二十五年の秋の大会
十月の浜名湖の朝波静か小型漁船とヨットの並び
掛川の駅より見える天守閣昔の領主妻の功名
十月の台風一過刈田には汗ばむほどの眩しい光
静岡のプラットホーム並んでる小学生は記念の旅行
新富士の駅の北方霊峰は雲に隠れて想像の中
小田原の駅から見えた中学のスローガンには覇気のふた文字
仙台の寺に集まりお念仏差別戒名物故者悼み
仙台の津波被害の寺に来てその日の模様切実に聞く
バスに乗り阿武隈川の橋渡る泡立ち草は畦の形に
来てみれば寺の住職大学の後輩だった現地研修
家々の基礎が残った町を行く泡立ち草と薄が茂る
庭先の優しい赤の萩の花一枝切って君にあげよう
君からの土産栗蒸し羊羹を切って食べてる秋の真夜中
(無題)
秋旅行姫路郊外青山の道の標を人に案内
山陽の旧道歩き下手野の道標見る巡拝人と
宝瓶の御影を祀る十輪寺若住職の話丁寧
須磨寺の庭に敦盛直実の銅像を見る巡拝の旅
脇浜阿弥陀寺を詣でて詠める歌一首
三代目法然松はまだ子供皆の力で大きく育て
尼崎バスより降りて如来院参拝終えて寺町歩く
勝尾寺の二階堂にて柴の戸の詠歌唱えて御影を拝む
一心寺開山堂をお参りし御廟前にてともに念仏
天王寺阿弥陀堂前立ちながら皆と唱えたうつせみの歌
十人が声を掛け合い山登る十八番の祖師の霊場
つきかげの御詠歌唱えお念仏月輪寺の本堂の中
平成の二十五年の秋の宵三日月下に金星を見る
ギリシャ語の炎と刺が名の由来ピラカンサスの赤が綺麗だ
中学の職員室の蔦紅葉四十五年前の風景
秋の日の銀杏紅葉の並木道互いの夢を話し合ったね
川沿いの桜紅葉の赤もいい車を降りて少し歩こう
見に行こう淡い黄色と赤色がきらきら光る欅紅葉を
犬山の古城近くの会場で新曲和讃皆で唱える
晩秋の大宮駅のホームから朝日に光る富士山を見た
埼玉の岩槻の町浄安寺霊場詠歌解説をする
中津川駅の近くの大泉寺詠歌新人皆で歓迎
(無題)
この年の十一月の富士山は六分の緑四分の白雪
クリスマスひと月前の銀座にははずんだ声の買い物の客
山茶花の花一輪を見つけたよ君と歩いたあの細道で
十二月メタセイコアの紅葉が南宮山の麓で光る
木曽川を渡って右に見えたもの赤白斑の鉄塔の列
冬初め鈴鹿連山なお紅葉薄青色の空に合ってる
伊賀の町ゲートの上に若忍者手裏剣持ってちょっと笑って
平成の二十五年の冬の宵三日月下に金星を見る
街角のビーナス今宵光ってる地上の星を君と歌おう
十二月黒褐色の伊吹山泰然としてそれもまたいい
冬初め滋賀の田畑の色がいい黄土色とか麦芽色とか
小窓には赤紫のシクラメン聞いてみたいな昔話を
バイパスの中央分離冬楓枝の先には最後のひと葉
何本も天に伸びてる枝がある冬の欅もまた忙しい
冬至過ぎ雪を被った伊吹山麓の色はなお枯れ草のまま
下駄箱に小振りピンクの冬薔薇君は優しく見つめていたね