住職、加藤良光の短歌・平成30年

 

1月

一月の二十三日富士の山白と濃紺峻厳の色

その足の一歩一歩が物語り玉三郎の傾城の舞

三分咲き東京芝の増上寺梅の白さが新春告げる

福は内ごもっともまたごもっとも鬼と言わない寺の豆まき

立春の真澄の空を背に受けて伊吹の山は白の正装

菊川のお寺応声教院に皆でお参り説話拝聴

舘山寺温泉宿に到着し桧の風呂に皆で入浴

浜松のフルーツパークいちご狩り温室の中皆の歓声


浜名湖の岸辺を巡る冬の旅寸座峠の店で昼食

禅寺の豊川稲荷妙厳寺地元人とて先達をする

豊橋の名前由来の橋なかば左に見えるお城を示す

御堂にて恵心僧都の大遠忌天台座主の声は朗々

知恩院御堂正面涅槃像鈴鉦持って和讃唱え

 


4月

春告げる白い小花の沈丁花歩きを停めて君と対面

きらきらの雛人形の段飾り今日の祭りは君と二人で

満開の桜の下を歩きたい君の右手と僕の左手

華頂女子中学校卒業式

華頂女子中学校の講堂で門跡猊下祝辞代読

三月の夕陽を受けた伊吹山頂上付近尚も白雪

東山中学生徒卒業の記念参拝はなむけの言

ちっちゃくて丸い蕾の木瓜の花薄いピンクの色が可愛い


華頂短期大学卒業式

厳かでまた華やかな式典の結びの歌は蛍の光

文教小学校卒業式

はきはきと一人一人が返事する卒業証書授与の瞬間

春の朝雲が棚引く伊吹山山頂は白麓褐色

東山幼稚園卒園式

保護者席頷く母の目に涙声張り上げて卒園の歌



 

5月

公園の白木蓮が笑ってる春が来たよね春になったね

本堂は春の彼岸の共参り詠歌和讃に念仏の声


京都文教大学卒業式

学科ごと別れの言葉述べている中国からの留学生も

佛教大学卒業式

代理にて浄土門主の祝辞読み皆と歌った母校の校歌

満開だ花びら赤くまん丸だペチャクチャ話す木瓜の花達

彼岸過ぎ麓の田畑草萌えて伊吹の山は春を待ってる

鈴なりの馬酔木の花はミルク色膝をかがめて君は見ていた

むくのき園卒園式

園長がひとりひとりに名前呼ぶ卒園証書受け取る子達

善導寺和讃唱える法要に参加できたと挨拶をする

佛大の四月一日入学の記念式典キャンパスのさま

増上寺御忌の詠唱大会に挨拶をして詠歌唱える

東京の桜の中を歩いてる行き会う人の笑顔とともに

蒲公英の黄色と矢筈豌豆の赤い色とが畦道飾る

東山幼稚園での挨拶は誕生仏の一本の指

東山中学校の新人にインド語南無の意味を解説

御堂には京都文教中学と高校生の緊張の顔

華頂女子高等学校入学の式に臨んで祝辞を読む

紫と黄色模様の白い花著莪一輪が庭に咲いてた

鮮やかな赤と黄色のチューリップ元気いっぱい好きだよ君が

知恩院御忌の詠唱大会に導師勤めて詠歌唱える

山吹の黄色の花が美しい参道下りる五月の初め

赤もいい白もピンクもみんないい躑躅の花が僕は大好き

薄曇り五月一日伊吹山麓の村は代掻きの前

伊勢平野田植えの後の水光る電車の中は行楽の声

高木の黄色の花が満開だ名前を聞けばそれはすだ椎

黄昏の八坂神社に一人来た西楼門は夕陽に染まる

朝霞萌黄色した伊吹山麓の田では水色光る



 

7月

春四月総本山の御忌大会舞奉納を目の前で見る

田植えあと水面が光るその中を黄色帽子の子供が歩く

稲と麦三河平野の五月には黄緑色と黄金の色と

梅雨入りのその日に咲いた夏椿白く清楚な花びらがいい

梅雨晴れの朝陽を浴びて光ってる鉄砲百合の凛としたさま

六月の梅雨の晴れ間の伊吹山緑輝く王座の姿


夏至近く夕陽を浴びた梔子が甘い香りで僕を誘惑

蒲生野を見渡す丘の極楽寺猊下の祝辞頂いて読む

山頂は阿育王塔石塔寺諸仏諸菩薩拝んで歩く

帰り道薄いピンクの撫子が一輪二輪僕に微笑む

青い空黄色ひまわり夏の色君は今頃どうしているか

七月の薄雲掛かる伊吹山緑山肌清々として

ふた株の朱色花びら萩の花二人で見ればなおも楽しい



 

10月

庭先の黄色小花の女郎花姿優しい婦人のようだ

陽を浴びて力いっぱい咲いている紫色の桔梗がいいな

近づいて薄の花の写真撮る風の揺らぎの間の中で

夏の日はハイビスカスの赤い花南の国の音が聞こえる

サルビアの花を見るたび思い出す叶わぬ恋の歌の旋律

ペンタスは星の形の夏小花赤もピンクも白も可愛い


八月の最後の朝の伊吹山背後の空は高い白雲

東山山科草津柘植上野初秋の夜に電車乗り継ぐ

伊賀上野開化寺の朝本堂は説教僧の声のみ響く

浄土宗二十九年学術の大会開く秋の東京

知恩院職員同士会話する金木犀の匂いの便り

この秋の菊の香りを待っている二人歩いてどこまで行こう

藤袴花瓶に生けて眺めてる君の横顔僕はすきだな

秋の日の塀の上には杜鵑草花も蕾もダンスしている

石蕗の黄色の花が美しい秋の京都をそぞろ歩けば

街路樹は燃える色した花水木深まる秋に君の面影

鮮やかな朱色がいいね錦木は艶で競えば君が最高

知恩院秋の詠唱大会に導師勤めて詠歌唱える

川端は桜紅葉の赤の色君と歩いた古都の晩秋

少しずつ紅葉色した伊吹山秋の姿もまた美しい

江津市の総合市民会館で三祖の歌詞の和讃唱える

魚津市の文化ホールで講演す越中国の霊場巡り

晩秋の伊吹の山は二段色紅黄緑と冠雪の白

庭園の満天星躑躅赤がいい私いますと語りかけてる

十二月冬陽の中の伊吹山静穏にしてしかも泰然

梔子の丸く黄色い実が光る師走京都の小道歩けば

曇天の空の下には冠雪の霊峰伊吹毅然の姿

車窓より銀嶺伊吹厳然と過ぎる麓は忽ちの靄

十二月土曜の朝の滋賀平野枯れ田を走る自転車二台

十二月八手の花が咲いていた祖師の霊場石段の下

平成の三十年が始まった平和な年でありますように

水仙の花の白さが好きですと君は言ってた喫茶の店で

小寒の朝日に光る伊吹山南斜面は純粋の白

雪の朝成人式の知恩院献灯献華振り袖揺れて

一月の雪の富士山窓の外韓国女子に予告案内

雪残る東京芝の増上寺国の議員と共に念仏


厳寒の夜の三門人集う皆既月食空を見上げて

山頂は白銀光る伊吹山二月二日の朝の一瞬

米原は白一色の雪の中ホームに立てば頬に寒風

庭園の池の辺りに椿の木薄紅色の蕾見つけた

立春の養老山地雪被る尾根を重ねた姿険しい

坂道の梅木の様子眺めてる枝の先には小さな蕾

堂々の伊吹の山の雪姿二月の空に独り輝く

頂は姿も見えず雲の中伊吹の山の冬の光景



 

11月

峻厳の霊峰伊吹雪白く日没空に対峙している

参道の脇に咲いてる沈丁花清楚な色が君に似ている

境内のあちらこちらに春の花白い馬酔木の小鈴可愛い



残雪の姿険しい伊吹山麓はなべて春の装い

春彼岸梅咲く町の中津川大泉寺にて和讃斉唱

春霞伊吹の山も淡い色麓の町も光暖か

約束の桜の下で待っているニコニコ顔の君が見たくて

好きなのは白木蓮の花びらと君が言ってた春になったね

善導寺春の詠唱大会に祝辞を述べてともに念仏

桜舞う御忌詠唱の増上寺支部奉納の声に聞き入る

春四月母校佛教大学の入学式に祝辞代読 京都華頂大学華頂短期 大学入学参拝挨拶にて

大学の名前華頂はいい名前花愛してと学生に言う 佛大の新入生の参拝に祈る思いは学業成就



 

12月

頂上に僅かに残る白い雪伊吹の山も春の身支度

新入の愛知東海学園の大学生に挨拶をする

知恩院華頂女子校入学の式に臨んで祝辞代読

東山高校出向き入学の式典参加祝辞代読

東山中学生の初参り挨拶前に正座合掌

詠唱は熱い思いの心持ち猊下の垂示深く沁み入る

赤と白ピンクの躑躅咲いている綺麗綺麗と君は喜ぶ

四月末代掻き始まる滋賀平野水面光る朝の風景

藤棚が見たいと君のリクエスト明日の朝は電車に乗ろう

水田と麦の緑が交差する五月三日の滋賀の夕暮れ

早緑の色の装い伊吹山生気漲る季節になった

雨上がり滴が光る赤い薔薇二人で見たね歩み留めて

石段を登った角に咲いていた三葉躑躅を思い出してる

慶祝の和讃の歌詞を解説し共に唱えた研修の会

麦刈りと早苗田混じる滋賀の町五月終わりの午後の風景

東京を夜九時に発ち京都には五時間遅れ朝四時に着く

六月の朝の霞の伊吹山萌黄の色も淡い粧い

水色やピンクの色の紫陽花が咲いてる道を君と歩いた

知恩院特殊検定指導者の講義の中で四季の花説く

山緑田原緑の宮城県北部を走る電車に乗って

盛岡の駅に降り立ち町歩く講習会のホテル目指して

駅前の店の盛岡冷麺はキムチ辛さとスイカの甘さ

浄土宗東北地区の講習に出でて詠歌と和讃唱える

盛岡の城跡上り本丸の隅櫓跡ベンチに座る

啄木の歌碑を見つけて写真撮る岩手の山の見えるその場所

知恩寺と清浄華院黒谷の霊場巡りその本を説く

太陽に向かって咲いた向日葵が好きと言ってた君の笑み顔

炎天の滋賀の平野の青緑農道歩く老人の列

夏山の姿も雄々し伊吹山三十年の七月半ば